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メアリー
Vol6. 熱海に暮らす。自然と生きる。 海と山と温泉と共に、豊かに暮らしていくための防災マニュアル
海あり、山あり、温泉あり。豊かな自然に抱かれた別荘地としての歴史を持ち、近年も首都圏からの移住先としていっそう注目を集める熱海。
熱海で暮らす、熱海で事業を始める。そう考えた時に、避けては通れないのが、自然災害のリスクです。熱海での災害をどのように考え、想定し、備えれば良いのか。
これまでの防災マニュアルの連載では、熱海で賃貸住宅を借り、暮らしていく上で、入居者としてできることについて、取り上げてきました。
では、防災とは、借りる人たち自身が対策していれば、それで十分なのでしょうか。
第6回目では、熱海で物件を持つ、大家さんに向けた内容になります。今回もマチモリ不動産・三好代表にお話を伺います。
入居者との信頼にもつながる、「防災のひと工夫」について、一緒に考えてみませんか?
「防災って、何から始めればいい?」そんな大家さんに届けたい話
メアリー「これまでの記事では、私たちが熱海で暮らす上で、普段から備えるべきモノ・コトについて主に伺ってきました。」
三好「物件の借り手がいて、一方で、物件のオーナー、つまりは大家さんたちがいます。大家さんもまた、物件を所有し貸す立場として、防災への関心を持っている方も多いのではないかと思います。」
メアリー「ある調査では、災害対応力の充実した住宅に魅力を感じる賃貸居住者は多いという結果が出ています。防災設備が整っているということが、賃貸物件の大きなアピールポイントになっている、ということですよね。」
2023年度 賃貸契約者動向調査(全国※) 魅力を感じるコンセプト住宅は「防災賃貸住宅」がトップ
三好「そうですね。大家さんとしては、物件を良い借り手と結びつけるために、洗練された内装や便利な設備だけでなく、防災への意識も求められる時代になっている。そんな中で、大家さんたちが気負わず始められる、「第一歩」を考えるきっかけに。今回は、そういった話をしていきたいと思います。」
まず何をする?オーナーの“防災の第一歩”
「何から始めれば?」に答える、基本のき
メアリー「大家さんが、防災対策で最初に考えるべきことって何でしょう?」
三好「まずできることは、これまでの防災のお話で、私たち個人の備えとして確認してきたことと、同じです。『3つの特性』そして『3つの期間』に分けて考えること。」
メアリー「ええと、3つの特性は、地域特性、建物特性、利用者特性。3つの期間は、発災期、被災生活期、復旧期……でしたよね?」
第2回 備えあれば憂なし。でも、何を揃えたらいいの?災害の「3つの期間」別に考えよう!
三好「その通り!これを大家さんバージョンに、応用して考えてみましょう。仮にメアリーさんが、熱海のある場所に、ビル1棟を持つ大家さんだとします。地震を想定し、3つの特性、3つの期間に分けて、条件を整理できますか?」
メアリー「はい!今まで学んできた内容をふまえて、表にしてみました。」
三好「いいですね!メアリーさんのやり方はあくまで一例ですが、こうして表に整理することで、今から具体的に何ができるか、明確になりますね。」
メアリー「地震を例に挙げましたが、最近増えている気候変動などの災害において、特に意識すべき対策はありますか?」
三好「他の自然災害でも、3つの特性、3つの期間にわけて考えるのは同じですね。台風でいうと、周辺に大雨のたび溢れるマンホールや側溝がないか確認しておくとか(地域特性)、ベランダから排水できずに室内が浸水する場合があるので、普段からドレーンの掃除をしておくとか(建物特性)。」
メアリー「火事の場合も同じく考えて良いでしょうか?」
三好「はい。ただ、火事に関しては、避難経路の確認等の備えはもちろんのこと、法令遵守という点でも大家さんは気を付けなければならない点があります。消防法は遡及適応…つまり、法改正に伴って設備を改修・追加しなければ違法となってしまうのです。例えば自動火災報知設備が設置されていなければいけないのに未設置とか。」
メアリー「大家さん一人で、さまざまな法律の知識まで網羅するというのは現実的じゃない気がします。でも、不動産業者も法律違反に気付かないまま、物件を取り扱ってしまうことがあるんですね……」
三好「熱海に多い古いビルは、法律がほんとうに複雑で。マチモリ不動産がリノベーションに携わる際に、消防法、建築基準法、都市計画法や水道法といった法律への適合性を調べた上で施工しました。」
メアリー「マチモリ不動産は、三好さんのように不動産管理会社での経験がある方、そして一級建築士の方々も所属されているので、法律の確認、実際の工事といったところまで、一気通貫して行えるんですね。」
入居者との防災コミュニケーション
入居者の安心が、オーナーの信頼につながる
メアリー「以前、防災座談会の会場として部屋をお借りした共同住宅『しぇあひるずヨコハマ』では、共用部分の倉庫に防災グッズ、非常食をたくさん備蓄されていたのが印象的でした。ほかにも、入居者が安心して暮らすために大家さんができるひと工夫って、何があるかな……」
三好「大家さん・住民同士で緊急時もやり取りができるツールとしてLINEグループを使っているところもあるようですね。そこまで密なコミュニケーションでなくとも、建物内の掲示板や、回覧板でハザードマップや緊急避難先等の情報を共有されているだけでも入居者としては安心ですよね。」
メアリー「個人的には、建物全体で防災訓練の機会があれば、ぜひ参加したいです。時間を合わせて集まることが難しければ、3つの特性、3つの時期を整理した防災マニュアルの素案を大家さんが作って、各入居者にチェックしてもらうというのは、どうでしょう?」
三好「そうですね、タイミングとしては、契約・更新のタイミングでそういった防災の話をしてみるのは良いかもしれません。大家さんから直接お話しするのか、我々管理会社が間に入ってお話しするのか、オンラインで防災訓練の動画を観てもらうのか。方法はいろいろ考えられますね。」
建物は人とおなじ、備えることで長く安全に
三好「私はよく、建物を人間にたとえるんです。基礎や柱、梁は骨、配管や配線は血管。人と同じように、建物も歳をとります。しかし、高齢でも元気な方がいるように、古い建物だからといって全てリスクが高いというわけではない。どうすれば築年数の経過した建物を、安全に保つことができるか。大切なのは、その特性を理解していること、相談できる人が周りにいることだと思います。」
メアリー「私たちの人生に通じるものがありますね……。お話を伺っていると、大家さんってほんとうに大変な仕事だなと感じます。」
三好「不動産を持って人に貸す、ってすごいことです。リスクを負って、住む場所、商売する場所を提供している。それだけで社会的に意義があることで、まちづくりだと私は思っています。」
メアリー「大変だけど、素敵な仕事ですよね。時には頼れる専門家や、大家さん仲間と協力しながら、大家さんのお仕事をぜひ、楽しんでいってほしいです。そして、できることから一つずつ、始めてみる。今回のお話が、大家さんにとってそのヒントになれば、嬉しいです。」
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賃貸物件を選ぶ基準として、防災や消防は、大きな意味を持つようになってきています。
地震や、気候変動に伴うさまざまな災害のリスクに、物件オーナーとしてどう備えていくのか。実際に災害が起きたとき、どこまで対応すべきなのか。何が法律で義務付けられているのか。
大家さんも多忙で対処しきれないことや一人では抱えきれないようなことがあるとき、管理会社や大家仲間など身近に話せる存在がいるとよいですね。
建物の修繕や管理に関するお困りごとなど、ぜひお気軽にご相談ください。
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