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DATE2024.07.04

この記事を書いた人

メアリー

「斜都」熱海の魅力と課題。身近なことから知ろう・見よう|防災まち歩きReport

 

海あり、山あり、温泉あり。豊かな自然に抱かれた別荘地としての歴史を持ち、近年も首都圏からの移住先としていっそう注目を集める熱海。

 

 

熱海で暮らす、熱海で事業を始める。そう考えた時に、避けては通れないのが、自然災害のリスクです。

 

  

第1回第2回はテーマ別に、熱海における防災を考えてきましたが、今回は番外編。

 

 

5月に実施された「防災まち歩き」のレポートをお届けします。

 

 

専門家と一緒に、街を歩きながら災害に備えて注目するべきポイントを学びました。

 

 

 

番外編 防災まち歩きレポート

「斜都」熱海の魅力と課題。身近なことから知ろう・見よう

 

 

 

まち歩きのナビゲーターは、伊豆山の土石流災害が発生した際の初動調査にも従事された、地質地形専門家の田中義朗さんです。

 

 

まち歩きの起点は、源頼朝にもゆかりのある古社・今宮神社。

 

 

 

 

ここから、桜木町と梅花町の宅地造成地を徒歩で巡ります。

 

 

 

 

 

高度成長期に開発されたこれらのエリアは、山の尾根に挟まれた谷状の地形。

 

歩いていくと痛感します。熱海の坂道の険しいこと…!

 

 

 

 

坂の多い熱海の街は、“斜都”と呼ばれることもあるほど。

 

坂の街としては尾道、長崎などがよく知られていますが、市街地の平均傾斜度、市街地に占める傾斜地の割合、いずれも熱海が国内でダントツ、トップなのだとか!

 

引用:全国斜面都市の比較分析

 

 

 

急な斜面にそのまま、住宅を建てることはできません。

 

地面を削り取る「切土」、地面に土砂を盛り上げる「盛土」を行い、平らな地盤面を作る必要があります。

 

 

 

引用:内閣府 防災情報のページ

 

 

盛土された土地は、元の地盤との境目が滑りやすく、大雨や大規模な地震の際に変形、崩落などが発生しやすいとされています。

 

 

さらに熱海は、市街地に糸川・初川・和田川の3本の川が流れる、水が豊かな地域でもあります。

 

 

土地を開発する場合、もともと川や水路だったところに蓋をして、その上に道路を作ることも多いのです。こうした地下を通る水路のことを「暗渠(あんきょ)」といいます。

 

 

暗渠は目には見えませんが、水の集まる場所。大雨の際に、氾濫した河川の水や土石流の通り道になりやすい場所であるともいえます。

 

 

 

 

 

▲ 田中さんに先導され(さすが専門家…!という健脚ぶり)坂道を進むまち歩き一行

 

 

 

斜面が階段状になっている場所、ここが「切土」「盛土」かもしれない。普通の道のようだけれども、古い地図を見ると沢が流れている場所だから、今は「暗渠」となっているのだろう。

 

息を切らしつつ、談笑しつつ、普段とは違った目線で街並みを観察していきます。

 

 

 

 

どんどん坂を上っていくと、やがて住宅街は姿を消し、目の前に続く緑。

 

そこには「風致地区」の看板がありました。

 

 

 

 

風致地区とは、自然の景観を守るため、建築や木々の伐採に一定の制限が加えられる場所のこと。

 

引用:熱海市風致地区条例

 

 

 

 

▲ 木々に囲まれた道の先には「砂防指定地」の看板も

 

 

砂防指定地は、土石流の発生が予想される渓流の周辺で、砂防設備を要し、伐採や切土、盛土などの行為が制限される区域です。

 

引用:国土交通省 砂防指定地とは

 

 

 

 

 

これは砂防設備のひとつ、「砂防ダム」と呼ばれるもの。上流からくる土砂を貯め、流出を防止する役割があります。


最近では観光資源として活用されることもあるのだとか。

 

ボルダリング(秋田県)・砂防ダムをめぐるツアー(長野県)・そばに公園を作って天然水のウォータースライダー(広島県) などなど。

 

 

 

坂道を上りきった後は、桜木町のカフェレストラン・Piesta へ。

 

 

ここまで歩いてきた地形について写真や地図、データを参照しながら振り返る、座学の時間です。

 

 

 

 

▲ 苺とカスタードの美味しいタルトをいただきました

 

 

 

 

伊豆山の土石流災害の初動調査における、田中さんご自身の経験についても、お話を伺うことができました。

 

 

伊豆山の災害は、盛土の崩落によって引き起こされました。これを契機として、危険な盛土等を規制する「宅地造成及び特定盛土等規制法」が施行されています。

 

引用:国土交通省 盛土・宅地防災

 

 

 

 

熱海は元々の地盤が固く、地震には強い土地。

 

一方で、急斜面の地形は、土砂災害のリスクが高くなるのも事実です。しかし、斜面の多さは必ずしも、悪いことだけではありません。

 

”斜都”の高低差が生み出す奥行きのある景観は、この街の最大の魅力のひとつなのです。

 

 

 

 

防災まち歩きの終盤、坂を上り、振り向いた時の景色の美しさに、はっと心を奪われました。

 

 

街と海を一望できるこの景観が、観光地として、移住先として、長年に渡り人々を惹きつけてきました。

 

 

熱海の魅力的な風景は、坂の多い、自然の地形あってのものだったのだと、実際に歩いてみて改めて理解できた気がします。

 

 

 

 

 

田中さんに曰く、防災の基本は「自分たちの住む場所の地形の成り立ちや特徴を、自分たちの足で見て回り、理解すること。そして、その街を好きになること」。

 

 

まさしく今回の防災まち歩きは、その実践でした。

 

 

 

 

熱海の急な坂の登り、景色を眺め、どのような地形なのかを知る。難しく考えすぎず、ハイキング気分で歩きながら「今の熱海」を知れた気がした1日でした。

 

 

(今後、熱海の他のエリアにも足を伸ばして「防災まち歩き」がシリーズ化できたらいいな、と思いました◎)

 

 

次回の防災記事は「建物特性・利用者特性・地域特性の3つの特性」。そちらの内容を元に、今後の備えについて考えていきたいと思います!

 

 

 

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