
この記事を書いた人
メアリー
熱海の”裏”聖地となるか?バーコマド
熱海の「コマド」をご存じだろうか。
昨年12月の記事でも、名前を出していたバー「コマド」
今年4月にはBRUTUS (色街写真家・紅子が案内。遊廓・赤線の姿を今に伝える宿と店)、dancyu(夜の熱海を徘徊する|ちょっとディープな熱海食べ歩き旅・後編)で紹介されるなど、いま熱海で最も注目される場所のひとつといえる。
この機会に改めて、以前の私の記事や他の媒体でも取り上げられていない側面を、皆様に紹介したいと思うのである。
目まぐるしく移り変わる熱海の街において、このコマドも常に新たな試みを続けている。
コースターにも秘めたこだわり。熱海の、過去と今をつなぐ場
12月の記事と重なる部分もあるが、まずはバーコマドというお店を簡単にご案内したい。
場所は熱海市中央町。小さな料理店やスナックが外見にはひっそりと、しかし扉の中に確かな活気をたたえて集まるエリアである。
かつて一帯は、赤線地帯として、女性を求める遊客で賑わっていたという。
当時の店々は今や姿を消した。しかし、遺された建物の意匠から、当時の街の面影を忍ぶことができる。
時代は忘却され、貴重な建築物も失われようとする中、その一つに再び息を吹き込んだのが、バーコマドである。
▲ 煉瓦の壁には店名の由来となった小さな窓。お店は今年の5月で1周年を迎えたが、建物の歴史は70年を超える。
▲ 色街の残り香に触れてもらうため、店内にもほとんど手が加えられていない。
グラス、コースター、飾られた絵画などは、いずれも地元・熱海在住の作家の作品。街の過去、そして現在を伝える場としての、こだわりが伺える。
マルチなカルチャーの発信地として。熱海の、中と外をつなぐ場
コマドはバーであるが、お酒とそれを楽しむ場を提供するだけではない。
不定期であるが、イベントを開催しているのである。
コマドの2階は、10人は座れるだろうか、そのくらいの広さの和室になっている。
お酒を酌み交わすにも良いのだが、イベントの会場として使えば、これもまた、雰囲気が出る。
坊主ストリッパーとして活動する清水くるみさんは、コマドを愛し、自身の表現の場として活用している方のひとりである。くるみさんはこれまでにコマドで、自身の作品の展示やショー、クロッキー会などを開催している。
冒頭引用したBRUTUSの記事にてコマドを紹介している写真家の紅子さんと、くるみさんとのトークイベントが行われたこともある。
熱海市内各所でさまざまなアーティストの作品が制作・展示されるイベント「ATAMI ART GRANT」の会場の一つにもなり、表現の世界との親和性は既に折り紙付きだ。
今後も毛色の変わった催しを展開していきたいと、店主の高須賀さんは語る。
9月に開催した「コマド怪談会」のフライヤー。
著名な怪談師をお招きし、大盛況であった。
▲ コマド怪談会の会場の様子
ドープにしてディープ。熱海であなたと誰かをつなぐ場
さて、このバーコマドであるが、私にとっては、行きつけ以上の縁ができてしまった。
お店を手伝ってみないかという話をいただいたのである。
カウンターの外からではなく、中からお店を眺めるようになった。地元の常連さん、観光の方…老若男女さまざま、隣と交流を深める人もいれば、しっぽりと飲む人もいる。それぞれの使い方を受け入れる、コマドの懐の深さを改めて実感したのであった。
先に挙げた怪談会の企画にも携わることができた。
来てくださったお客さんから、「コマドが熱海のロフトプラスワンになればいいね」とコメントをいただいて、胸のときめきを覚えたものである。
メインカルチャーではない、マニアックで、エッジの効いた表現を可能にする、どこか秘密めいた場所。私たちの好奇心、想像力の、裏側をくすぐる場所。
バーコマドの持つポテンシャルは、きっとそういうものである。
テレビのロケ番組に映らずとも、他にはない場所として、人が集まる。熱海の“裏”聖地とでも表現しようか。
私は今年の4月で一旦お手伝いを退き、今は店主と、もう一人のスタッフの方が交代でお店に立っている。
加えて毎月、東京から一日限定のママが来たり、時には前述の清水くるみさんが接客したりと、コマドの顔触れはカウンターの外も中も幅広い。
特別なイベントがなくても、コマドは常に何かの、誰かの舞台だ。
その日そこに立つ人、現れる人が異なれば、異なった時間の流れ方をする。月一回、週一回と言わず色んな日に、足を運びたくなるお店である。
基本は月・水・金・土曜日にオープンしているが、不定休のため、適宜Instagramのお知らせをご確認いただきたい。
おわりに
未だ残暑厳しい熱海。
まっすぐな陽射しに縁どられた昼を乗り切れば、影もあやふやな夜の時間が待っている。
ぬるい潮風に流され歩いていれば次第に、新たな出会いを求めて、あるいは喧騒や蒸し暑さから逃れて、街の裏面に潜り込みたくなるはず。
バーコマドは、そんな夜にうってつけの場所である。
バーコマド
静岡県熱海市中央町5-9
不定休 18:00〜24:00
Instagram: @komado_atami