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DATE2023.09.06

この記事を書いた人

メアリー

熱海の”裏”聖地となるか?バーコマド

 

 

熱海の「コマド」をご存じだろうか。

 

昨年12月の記事でも、名前を出していたバー「コマド」

 

今年4月にはBRUTUS (色街写真家・紅子が案内。遊廓・赤線の姿を今に伝える宿と店、dancyu(夜の熱海を徘徊する|ちょっとディープな熱海食べ歩き旅・後編)で紹介されるなど、いま熱海で最も注目される場所のひとつといえる。

 

この機会に改めて、以前の私の記事や他の媒体でも取り上げられていない側面を、皆様に紹介したいと思うのである。

 

目まぐるしく移り変わる熱海の街において、このコマドも常に新たな試みを続けている。

 

 

 

コースターにも秘めたこだわり。熱海の、過去と今をつなぐ場

 

 

12月の記事と重なる部分もあるが、まずはバーコマドというお店を簡単にご案内したい。

 

場所は熱海市中央町。小さな料理店やスナックが外見にはひっそりと、しかし扉の中に確かな活気をたたえて集まるエリアである。

 

かつて一帯は、赤線地帯として、女性を求める遊客で賑わっていたという。

 

当時の店々は今や姿を消した。しかし、遺された建物の意匠から、当時の街の面影を忍ぶことができる。

 

時代は忘却され、貴重な建築物も失われようとする中、その一つに再び息を吹き込んだのが、バーコマドである。

 

 

 

▲ 煉瓦の壁には店名の由来となった小さな窓。お店は今年の5月で1周年を迎えたが、建物の歴史は70年を超える。

 

 

 

▲ 色街の残り香に触れてもらうため、店内にもほとんど手が加えられていない。

 

 

グラス、コースター、飾られた絵画などは、いずれも地元・熱海在住の作家の作品。街の過去、そして現在を伝える場としての、こだわりが伺える。

 

 

 

 

マルチなカルチャーの発信地として。熱海の、中と外をつなぐ場

 

 

コマドはバーであるが、お酒とそれを楽しむ場を提供するだけではない。

 

不定期であるが、イベントを開催しているのである。

 

コマドの2階は、10人は座れるだろうか、そのくらいの広さの和室になっている。

 

お酒を酌み交わすにも良いのだが、イベントの会場として使えば、これもまた、雰囲気が出る。

 

坊主ストリッパーとして活動する清水くるみさんは、コマドを愛し、自身の表現の場として活用している方のひとりである。くるみさんはこれまでにコマドで、自身の作品の展示やショー、クロッキー会などを開催している。

 

 

 

冒頭引用したBRUTUSの記事にてコマドを紹介している写真家の紅子さんと、くるみさんとのトークイベントが行われたこともある。

 

熱海市内各所でさまざまなアーティストの作品が制作・展示されるイベント「ATAMI ART GRANT」の会場の一つにもなり、表現の世界との親和性は既に折り紙付きだ。

 

今後も毛色の変わった催しを展開していきたいと、店主の高須賀さんは語る。

 

 

 

 

9月に開催した「コマド怪談会」のフライヤー。

 

 

著名な怪談師をお招きし、大盛況であった。

 

 

▲ コマド怪談会の会場の様子

 

 

 

ドープにしてディープ。熱海であなたと誰かをつなぐ場

 

 

 

さて、このバーコマドであるが、私にとっては、行きつけ以上の縁ができてしまった。

 

お店を手伝ってみないかという話をいただいたのである。

 

カウンターの外からではなく、中からお店を眺めるようになった。地元の常連さん、観光の方…老若男女さまざま、隣と交流を深める人もいれば、しっぽりと飲む人もいる。それぞれの使い方を受け入れる、コマドの懐の深さを改めて実感したのであった。

 

先に挙げた怪談会の企画にも携わることができた。

 

来てくださったお客さんから、「コマドが熱海のロフトプラスワンになればいいね」とコメントをいただいて、胸のときめきを覚えたものである。

 

メインカルチャーではない、マニアックで、エッジの効いた表現を可能にする、どこか秘密めいた場所。私たちの好奇心、想像力の、裏側をくすぐる場所。

 

バーコマドの持つポテンシャルは、きっとそういうものである。

 

テレビのロケ番組に映らずとも、他にはない場所として、人が集まる。熱海の“裏”聖地とでも表現しようか。

 

 

私は今年の4月で一旦お手伝いを退き、今は店主と、もう一人のスタッフの方が交代でお店に立っている。

 

加えて毎月、東京から一日限定のママが来たり、時には前述の清水くるみさんが接客したりと、コマドの顔触れはカウンターの外も中も幅広い。

 

特別なイベントがなくても、コマドは常に何かの、誰かの舞台だ。

 

その日そこに立つ人、現れる人が異なれば、異なった時間の流れ方をする。月一回、週一回と言わず色んな日に、足を運びたくなるお店である。

 

基本は月・水・金・土曜日にオープンしているが、不定休のため、適宜Instagramのお知らせをご確認いただきたい。

 

 

 

 

おわりに

 

 

未だ残暑厳しい熱海。

 

まっすぐな陽射しに縁どられた昼を乗り切れば、影もあやふやな夜の時間が待っている。

 

ぬるい潮風に流され歩いていれば次第に、新たな出会いを求めて、あるいは喧騒や蒸し暑さから逃れて、街の裏面に潜り込みたくなるはず。

 

バーコマドは、そんな夜にうってつけの場所である。

 

 

バーコマド
静岡県熱海市中央町5-9
不定休 18:00〜24:00
Instagram: @komado_atami