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DATE2022.12.27

この記事を書いた人

メアリー

【後編】羽休めの場所を求めて飛び込んだ街と、様々な出会い

はじめましてメアリーです。

 

現在は東京で金融系の仕事をしていますが、2022年の7月から9月、東京の会社を休職し、熱海で暮らしていました。

 

東京に戻った今も月に数回は訪れるほど、熱海での暮らしは私の心とからだに染み付いています。

 

前回は、そんな私の熱海生活の半分、主に日中の過ごし方について、書かせていただきました。

 

 

今回は、残りの半分。日が暮れてからの熱海の街について。

 

 

 

 

引き続き、取りとめもない思い出話ですが、これを読んで「自分が求めるものも、熱海にあるかもしれない」と感じてくださる人が少しでもいれば、幸いです。

 

 

 

すぐそばに温泉がある暮らし

 

 

日本有数の温泉地である熱海には、日帰り入浴のできる旅館やホテルも多いけれど、私は好んで銭湯へ通っていました。

 

地元の方が日常的に使う場所を、自分も気負わず通えるようになりたい。

 

そんな場所を知っていることで、「この街で生きている」という気持ちになれたから。

 

よく通っていたのは、住宅街の路地を抜けた先にひっそりと現れる「山田湯」。

 

湯船が一つと、カランが数箇所、壁面にはタイルでオランダの風車が描かれている。日々の疲れを溶かし、煮詰まった頭をほぐすには、こんなシンプルな銭湯こそ好ましかった。

 

 

椰子の木が並び、地中海のリゾートを思わせる親水公園も、思い出深い場所。

 

 

 

 

昼間は人の多い海辺も朝や夜は比較的静かで、何かに思い悩んだ時はベンチに座って波の音、停泊する船のマストの揺れる音を聴きながら、暫くぼうっとしてみる。

 

 

そうすると、少し心が穏やかになる。

 

街を散策することは、さながら宝探し。

 

自分で見つけた場所が、人生の宝物になる。

 

お気に入りの店を増やすことは、自分だけの宝箱を満たしていく作業だと思うのです。

 

 

学生の頃にも、熱海には旅行でしばしば訪れていたのですが、熱海が今日のように若者で賑わうより、少し前の話。

 

 

観光のメイン通りにも空き店舗が目立ち、街は時代に取り残されたような風情の、当時の熱海。私はそういう古い時代の陰、残り香のようなものに心を絡め捕られて「何も無いけれど、それが良いのだ」などと、知った風に語っていました。

 

 

熱海で暮らしてみて気付く。

 

 

この街は、3カ月どころでは飽きが来ないほど、見るべきものに溢れている。

 

 

夜の文化、夜の雰囲気

 

 

観光客の波は、夜には引いてしまう。しかし、熱海は居酒屋やスナック、バーが多く、夜こそ面白い街だと思うのです。これは、住んでみたからこその発見。

 

 

喫茶に比べて飲酒に執着のない私は、この領域に関して語れるものは少ないけれど、バーの「コマド」には気に入って通っていました。

 

 

 

 

築70年超の建物をそのまま使っているという店構えは、一見して営業中のバーだと認識するのが少々困難。

 

 

煉瓦の壁には店名の由来となった小さな窓が付いているものの、初めて訪れた際は、地図を何度も確認してからようやく扉に手を掛けました。

 

 

 

 

店内はこぢんまりとしていて、どこか怪しい雰囲気が漂う。

 

 

飾り棚に並ぶ戦後のカストリ雑誌(主にエロスな題材や読み物を中心とする大衆誌)が、端的にこの店のコンセプトを伝えてくれる。

 

 

 

 

二階もあり、急な階段を上ると和室が一つ。

 

こちらの本棚にも怪しげな書籍が揃っている。

 

自分の中で決まったお酒を飲みつつ、空間ごと味わう。この唯一無二の雰囲気が好きで、気付けばコマドが夜の居場所になりました。

 

 

もうひとつ、お気に入りの「アタミスタンド」というバーは、「昼飲み特化」を掲げ早い時間から開いていて、私は昼によく利用しました。

 

 

何時でも夜の気分を味わえるようにと、店内の照明は暗く設定されていて、薄闇の中で目を細めつつ読み取るメニューは、多種多様なアルコールにより厚い冊子となっています。

 

珍しいものを試したい性分の私は、ここで色々な薬草酒の味を覚えていきました。

 

そして、アルコールと同じくらい、フードの種類が多いんです。

 

酒のつまみだけでなく、本格的なビストロメニューからエスニック系の料理までどれも絶品で、私は食事目的で訪れる方が多かったくらい。

 

 

 

まだ変われる街と、変われる自分

 

 

 

 

思いのほか、何でもある街だった熱海に、まだないものも勿論ある。

 

個人的には、古着屋や若者向けのアパレル店が無いのが寂しいところ。

 

 

今の熱海には観光の方だけでなく、熱海に移り住み、店を開き、あるいはイベントを催すような若い人々が集まっている。

 

 

彼らは一時の流行に追従するのではなく、自身の夢を実現する場として熱海を選び、熱海の街を持続的に盛り上げたいという意思を持っているよう。

 

 

熱海に暮らす人が若く、新しくなっていく一方で、歴史ある景観が完全に無くなってしまったわけではありません。

 

先に述べた「コマド」が好例ですが、古い建物を活用し、街の情緒を守りながら、新しいことを始めたいという人も多いと感じました。

 

 

この街にまだないものを作りたいと思って、熱海に来る人たちが増えている。熱海はこれからどんどん、面白くなる。そんな気がするのです。

 

 

私は、大学を卒業し、就職し、”平均的な人生”に飲み込まれるように過ぎていく日々の中、羽を休められる場所を、ずっと探していた気がする。

 

 

自分が本当は何をしたいのか。海でも眺めて温泉にでも入って、ゆっくり考えてみたい、それが今回、熱海に来た理由でした。

 

 

 

3カ月を経て、自分の人生について明確な答えが出たわけではない。

 

それでも、熱海で暮らすことを選択して良かったと思っています。

 

沢山の素敵な場所、人に出会えた。旅行で訪れただけでは、この出会いは得られなかったはず。

 

熱海での生活は一旦、終わりを迎えましたが、これからも何らかの形で熱海との繋がりを保っていきたい。

 

 

変化していくこの街に関わりながら、自分の人生も面白く変化させたい。

 

 

いつの日か、熱海で羽を休めた私が、熱海から羽ばたいた、と言えるように。