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メアリー
私の「きてん」となる宿
熱海銀座通り商店街、行列の絶えないプリン屋さんのとなり。
宿の名前は、「Kiten slow & work stay」
人や町、文化、さまざまな視点や価値観に出会い、新しい一歩が始まる「起点」となる宿に。そんな想いが込められています。
今回、私は熱海市内で引越しをするにあたり、新居の入居日までの約2週間をこちらで過ごすことになりました。
そんな私のKitenでの暮らしを、一部ご紹介したいと思います。
熱海で働きながら熱海の宿に滞在する、というのは特殊な事例ではありますが、これから熱海でリモートワークやワーケーションをしてみたいという方のご参考になれば幸いです。
Kitenの入るビルはかつて、1階にお土産物屋さんがあり、2〜3階は大家さんや、「奉公さん」と呼ばれる若い従業員が共同で暮らす住居として使われていたとか。
熱海銀座商店街に面した入り口から、ふんわりプリンの甘い香りに包まれる1階を抜けていきます。
れんが色のタイル、ざらりと無骨な印象の階段、温かみのある色の壁。
これからしばらくの間、ここでの生活を彩ってくれるピースのひとつひとつ。高級ホテルとも旅館とも異なり、お洒落なアパルトマン、そんな印象です。だからこそ、宿泊よりも、「滞在」と言うのが似合う気がします。
階段の途中に、そっと飾られるドライフラワー。この宿の内装を手がけた人の遊び心と、宿への愛情が伝わってくるようで、思わず頬が緩みます。
今回、滞在したお部屋は、2階のドミトリールームです。
階数やお部屋の名前を綴ったプレートは真鍮製。
今は黄金色の輝きが眩しいけれど、これから年月を重ねて、また違った表情を見せてくれることでしょう。
2階の踊り場の壁では、熱海の風景を切り取った写真たちが迎えてくれました。
よく見ると、かなり昔の写真も!
靴を脱いで、扉をひとつくぐった先は、爽やかなペールグリーンの壁に、クリーム色のタイル貼りのかわいらしいフロア。きりりとした、清潔感のある廊下を進みます。
ドミトリールームは、ハシゴの上のお部屋と、下のお部屋の2種類。
お部屋ごとに施錠できるので、私物を部屋に保管しておきたい、という場合にも安心です。
お部屋に入ってみて、その広さにびっくり!
ゲストハウスのドミトリーというと、体一つ横たえられるスペースがあるだけ、というイメージだったのですが、こちらのドミトリーはとても広い!天井は私(約165cm)がまっすぐ立ってもまだ、頭上に余裕があるほど。
パソコン作業もできる小さな机、ハンガーラックが備え付けで、加えて私物を置いても窮屈さを感じません。これは、何日でもノーストレスで滞在できてしまう…ドミトリーの概念が覆されました。
今回、私が滞在したのはドミトリールームですが、Kitenには個室のお部屋もあります。
5室それぞれコンセプトや色使いも異なり、写真を見ているだけでも、ああ、ここで暮らしてみたいな、と思える素敵なお部屋です。
共用の水回りは、ドミトリーのお部屋がある2階に。
洗濯機と乾燥機の揃ったランドリーでお洗濯を済ませられるのも、中長期の滞在となるとありがたいところです。
個人的に一番ときめいたのが、お風呂。
なんと愛らしい、レトロなタイル張りのお風呂よ…。共用ですが、使用時には鍵をかけて、一人でのびのびと入浴することができます。
3階には、共用のラウンジ。
キッチンがあり冷蔵庫・調理道具・食器類も一通り揃っています。きちんと自炊できる環境が整えられているのも、中長期滞在の際には大事にしたいポイントです。
こちらのラウンジのコンセプトは、タイルと植物。使われているタイルは、場所によって大きさも色合いもさまざま。
朝の光の中のラウンジは、夜とはまた違った色に映ります。心なしか植物たちはより活き活きしているような。
コーヒーを飲まなきゃ1日が始まらない、という私のような人間には、フリードリンクでコーヒーを飲めるのが本当にうれしいのです。しかも、豆から挽いて飲むことができるんです。
ごりごりごりごりと、ミルの音を鳴らす。じっくり蒸らした上で、ゆっくりゆっくり、ハンドドリップでコーヒーを落とす。
部屋いっぱいにひろがる、コーヒーの香り。
なんてぜいたくな朝でしょう。
ラウンジの本棚には、「暮らし」や「生きる」「旅」などをテーマに選ばれた本が並んでいます。
エッセイや写真集、詩集、小説など、ジャンルはばらばら。気になった一冊を手にとって、コーヒーを飲みながら、のんびりページをめくっていきます。
自宅で過ごしているとつい、疎かにしてしまう朝の時間。
数日の旅行でも、慌ただしく過ごしてしまいがちな朝の時間。
例えば今回のように、働きながら、普段とは違った環境で暮らしてみるというとき。日常と非日常のはざまにあるときに初めて、このひとときの代え難い美しさに気付くのかもしれません。
ラウンジの外、ルーフバルコニーから見えるのは、朝日に照らされる熱海の街。晴れた日にはハンモックでゆられながら陽の光を浴びるのもきっと素敵。
新しい本との出会い、新しい朝との出会い。穏やかなひとときを過ごし、心も体も整ったところで、仕事に向かいます。
Kitenから歩いて数分のコワーキングスペースnaedocoは、1日からの利用もできるので、限られた期間だけ熱海でリモートワークをしたい、という方はKitenに滞在しつつ、naedocoを活用するのも良いですね。
おや、階段の途中に何かある…
Kitenの安心感の正体が、わかった気がします。
宿だけれど、ちょっと「家」みたいなんです。
ここは、暮らすように、旅するための拠点。
あるいは旅するように、暮らせる場所。
さて、今日も行ってきます。
***
少しの間、自分の住む街から離れて、気分を変えて仕事をしてみたい。
旅をするなら、観光やホテルの中のサービスを漫喫するというよりは、地元の人と一緒にその街で暮らすように滞在するのが好き。
Kitenは、そして熱海は、そんな人にきっと気に入ってもらえる場所だと思います。
今回の暮らしを経て新居に移った私ですが、自宅でも毎日本を開いてみたり、少しずつインテリアに気を配ってみたり、暮らしへの向き合い方が変わってきたように感じます。
私にとって、この場所は新しい暮らしの「起点」になったのかもしれません。