この記事を書いた人
ひらい めぐみ
等身大でくつろげるホテルを。「熱海紅楼」から宿としての営みを受け継ぎ、新たに誕生した「HOTEL 2YL ATAMI」。
江戸時代から栄える網代港があり、漁師町として栄えてきた南熱海エリア。市街地よりものどかでゆったりとした時間が流れ、ついつい長期で滞在したくなる場所です。
そんな南熱海で今年の6月、「HOTEL 2YL ATAMI」がオープン。オーナーの長瀬さんがお部屋のDIYのBefore/Afterの様子をSNSで載せると、瞬く間に反響が反響を呼び、開業前から注目を集めました。
藤沢で生まれ、京都で育った長瀬さんが熱海でホテル事業を始めた理由や、「HOTEL 2YL ATAMI」のたのしみ方、南熱海のおすすめスポットなどについてお聞きしました。
全室の窓から見える海と街並み
――学生の頃に起業をし琵琶湖や瀬戸内海でSUP事業をやられていたそうですが、その後熱海へ来ることになったのはどのような経緯があったのでしょうか。
長瀬さん:「ゆくゆくは一緒にホテル事業をやろう」と話していた大学時代の友人たちと、卒業後も定期的に集まっていたのですが、当時は住んでいた場所が東京、岐阜、京都とばらばらだったので、小田原から名古屋あたりで探していたんですよね。その中で一番集まりやすいのが熱海でした。
――そこから熱海でホテルをやろうと。
長瀬さん:そうですね。このまちに住む人たちの特徴だなと思うんですけど、数珠繋ぎでいろんな方を紹介してくれて、ホテルを探しているという話をしていたら、マチモリ不動産の三好さんと繋いでもらって。そのときは別の物件を見ていたんですが、改修費や初期費用などで、かなり融資を受けないと難しそうだったんです。そしたら三好さんに「まだ23歳なのに、そんなリスクとっちゃだめだよ!」とアドバイスをもらい、紹介してもらったのが「熱海紅楼」として運営していたこの場所でした。
――第一印象はどうでしたか?
長瀬さん:部屋からの景色を見て、ものすごくポテンシャルがあるなと。築年数による古さを感じる部分はもちろんありましたが、時を重ねているからこそ生まれる味を生かしてDIYしたら、居心地のよい空間になる手応えを感じました。
海で遊んだ後は、バーベキューとテントサウナ。早朝には朝焼けを見ながらコーヒーを
――「HOTEL 2YL ATAMI」に滞在する際のおすすめの過ごし方があればぜひ教えてください。
長瀬さん:夏であれば、SUPをして、夜はテラスでバーベキュー、締めにテントサウナでリラックスすると夜8時くらいには眠くなっちゃうんです(笑)。なので、そのあとはお酒を飲みながら友だちとちょっとお喋りして早めに就寝し、朝4時に起きて屋上で朝焼けを見るのが、いちばんおすすめですね。
▲小学生の頃の宿泊学習を思い出す、懐かしさ溢れる屋上
▲海の上から熱海の山々を眺める気持ちよさを体験できるSUP体験(左)と、リメイクした裏庭でチルアウトできるテントサウナ(右)
――たくさん遊んでぐっすり眠って翌日も早朝から満喫できるなんて、まさに理想の旅ですね……!
長瀬さん:朝食には地元のお店の「あいぞめ珈琲店」と「薔薇堂」から仕入れたコーヒーとパンをご用意しています。
――お部屋でこだわっているのはどんなところでしょうか。
長瀬さん:第一に、お客さんがゆったりくつろげることですね。若い方はもちろん、幅広い年代の方に泊まっていただきたいなと考えていたので、どんな世代の方でも落ち着いて過ごせるよう、部屋のトーンは落ち着いた色味でまとめています。
▲お部屋のタイプは洋室と和室の2種類。全室から相模湾を眺められます。
――近くにあるおすすめのお店はありますか?
長瀬さん:「じゅんじゅん」っていう焼肉屋さんがおすすめです。お店の方がいつも気さくに接してくれて、僕たちもすごくお世話になっています。また、朝食のパンを提供してくださっている「あいぞめ珈琲店」は、いつも予定より30〜40分早めに行って、コーヒーを飲んでリラックスしています。この束の間のぼーっとできる時間がすごく好きですね。
▲他にも削り節や地元の鮮魚を使った料理店「BUSHIMESHI」(上)や、コーヒーとピザのテイクアウトのお店「The STAND」(下)も。
旅をすることで、知らない自分と出会える。
――長瀬さんは、いつから旅やホテルに興味を持つようになりましたか?
長瀬さん:育ちが京都なので、日常生活の中で旅をしている人との距離が近く、自然と興味を持つようになっていた気がします。高校生の頃、ニュージーランドへ留学したんですが、慣れない土地へ行くことで、自分も知らない自分と出会える感覚があって。
――自分も知らない自分と。
長瀬さん:なんて言ったらいいかな。特に海外だと、といろんな人たちのいろんな生活を知って「こういう生き方もあるんや」って新しい価値観に触れることができるから、そこから自分がどんなことに興味を持っているのかわかったり、自分もこういうことやってみたいな、と選択肢が広がったりするんですよね。繰り返し聴いている好きな曲だけじゃなく、ほかのジャンルの曲を聴いてみたら、自分の好きな曲がどうして好きなのかわかったり、「あ、意外とこういうのも好きだな」と気づく感覚というか。
――地元を出ると、より客観的に地元のよさがわかるような。
長瀬さん:そうです、そうです。
▲オープンのお祝いに、後輩が贈ってくれたというレコードプレーヤー。部屋でリラックスできるようなレコードをセレクトしているそう。
――ホテル事業を始める上で、参考にしたホテルや誰かから教わったりしたことはありますか?
長瀬さん:宿泊施設の予約サイトCHILLNNを運営している龍崎翔子さんのもとで働いていた時期があって、そこでたくさん吸収させてもらいましたね。もともと障子の枠があったところをアーチにしているんですが、翔子さんへのリスペクトを込めて、株式会社水星が運営してるホテル「香林居」の部屋をサンプリングして作りました。
▲以前のお部屋の様子(上)と現在のお部屋301号室(下)。窓の景色が主役として引き立つ空間へと生まれ変わりました。
長瀬さん:あと、大学の時からちょっとオタクで(笑)、いろんなホテルを泊まり歩いては、スプレッドシートに運営会社やオーナー、客層や金額などを全部記録していたんです。電気ポットがどこで、アメニティは自社で作っているのか卸しているものを使っているのか……。だからそういう意味では、学生時代の頃に泊まったいろんなホテルを参考にしているかもしれません。
“2YL” に込めたメッセージ
――ホテルの名称に入っている “2YL” にはどんな意味が込められているんでしょうか。
長瀬さん: “2YL” は、“YOU LIVE YOUR LIFE” の頭文字をとった略称で。新卒時代、ホテル事業の知識や経験を積むために不動産の会社で働いていたんですが、少し前に同期と会ったら、僕の年収と同じ額のボーナスをもらってると話していたんですね。でも、東京には東京の生活があって、こっちにはこっちの生活があって、それぞれに大変なことがある。
▲室内のスリッパには、“2YL” の意味が込められたメッセージがこっそりと書かれています
長瀬さん:どっちが良くてどっちが悪いとかではなく、大事なのは自分の人生を生きることだと思うんです。ただ、それを全面にメッセージとして押し出すというよりは、ちょっと忍ばせるくらいがいいよね、と他のメンバーたちと話していたので、ホテルの名前にあえてわかりづらいかたちで取り入れることにしました。
――ホテルのお部屋も、無理に背伸びをしなくていいような開放感があるなと思いました。
長瀬さん:きらきらしたおしゃれな感じよりは、友だちの家に来ているような感覚を持ってもらえたらいいなという思いでつくった場所なので、等身大でくつろいでもらえたらうれしいですね。意外に “2YL” の由来を聞かれることはあんまりないので、「もっと聞いてくれていいのになあ」って内心思ってます(笑)。
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23歳で独立を決め、「HOTEL 2YL ATAMI」を立ち上げ、住み込みで友人たちと一緒に運営する長瀬さん。きっと、若さだけではなく「まちの人に助けられてばかりなので、少しずつ恩返ししていきたい」と話す、その飾らない等身大な長瀬さんの姿に、周りの人も魅了されているのだと感じました。
日々気を張って無理をしてしまっているな、と感じたら、ぜひ「HOTEL 2YL ATAMI」へ心を休めに行ってみてください。チェックアウトするころには、からだがふわっと軽くなっているはず。
▼「HOTEL 2YL ATAMI」予約サイト
https://hotel2ylatami.snack.chillnn.com/
▼「スタッフ募集」詳細
https://note.com/hotel_2yl_atami/n/n11cfb46994e7