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DATE2025.11.11

この記事を書いた人

メアリー

晩秋の木枯らしが開く、あやしげな物語への扉。『熱海怪談Vol.5』レポート

 

 

今年3月にこちらの記事で取り上げた、熱海発の怪談イベント『熱海怪談』。

 

▶︎ 前回の記事:あやしげな闇夜に、華ひらく物語。『熱海怪談Vol.4』レポート

 

小さな料理店やスナックが集まるエリア・中央町にて、ローカルから観光客まで幅広い人々が集う場所「バーコマド」から始まったイベントである。

 

 

 

 

今回は、先日10/26(日)に開催された、『熱海怪談Vol.5』の様子をお届けする。

 

2023年以降、半年に1回程度の周期で開催されてきた怪談イベント。会場は前回と同じ、中央町(旧町名・友楽町)の将棋道場。

 

開催に先立ち、熱海市内各所でイベントのポスター、フライヤーが道行く人の目を惹いていた。『熱海怪談』に限らず、地元で開催されるイベントの宣伝に快く協力してくれる飲食店や宿泊施設が多いのというも、熱海のあたたかさだ。

 

 

 

 

▲10/26(日)は、中央町に残る妓楼建築「つたや」で開催されたアートイベント。『GLOUND ATAMI 2025』の最終日。つたやの入口にも『熱海怪談』のポスターが貼られていた。スター及びフライヤーのデザインは、熱海在住のグラフィックデザイナー maya氏によるもの

 

 

「怪談」というコンテンツは、YouTubeなど動画・音声配信サービスを通じて、急速に裾野が広がっている。その勢いはオンラインのプラットフォームに留まらず、今年の大阪・関西万博の中で開催された怪談イベントにおいては、約1900席の会場が満員になったそうだ。昨今の怪談人気のほどが窺える。

 

 

長く暑い夏が終わったかと思えば、慌ただしく冬の足音が迫る10月。 

 

会場は満員で、やや汗ばむほどの熱気を帯びていた。ひとつ、ふたつと話が紡がれるごとに、観客のボルテージは上がっていく。

 

 

 

 

 

今回の出演者は、共に怪談師、そして作家として活躍されているお二人。

 

 

 

 

過去の『熱海怪談』にも出演し、熱海のローカルを魅了し続けている夜馬裕氏は、人呼んで”怪談界の帝王”。人間の心の闇が浮かび上がる物語の「厭」な後味が、聴くほどに癖になっていく。

 

深津さくら氏は、日本で一番恐い怪談を語る怪談師を決めるコンテスト『怪談最恐戦』の6代目(2023年)優勝者。静岡県内、そして熱海市内が舞台となったお話も披露してくださった。不条理な恐怖が、穏やかで淡々とした語り口ゆえ、真に迫る。

 

 

途中の休憩時間には、会場内で販売されるドリンクとフードで喉を潤し、空腹を満たす。静岡みかんのクラフトチューハイや熱海のゆるキャラ「あつお」のラムネなど、静岡、熱海らしいドリンクが並び、県外からの参加者にとっては旅行気分も味わえるようなラインナップ。

 

 

 

 

▲フードメニューは「大一楼」の香港焼きそばと「伊太利an」のミックスピザ。いずれも中央町の老舗の逸品

 

 

終演後には、出演者のお二人を交えて懇親会が行われた。テーブルに並ぶのは中華料理の「大一楼」、フレンチ居酒屋「マルノワ」のオードブルに、「中島水産」の刺身盛り。地元のグルメに舌鼓を打ちながらの歓談、賑わいの中で今回の『熱海怪談』は幕を閉じた。

 

 

***

 

 

かつて熱海では、作家の遠藤周作がホテルに宿泊し、怪現象に遭遇したという(ご興味がある方は遠藤周作『怪奇小説集』を参照されたし)。彼が訪れた当時のままの街ではないだろう。それでも熱海にはまだ、昭和時代の余香がある。とりわけ中央町エリアには、色街としての過去を今に伝える建物が残っている。

 

ここで、『熱海怪談』と同時期に開催されていた『GLOUND ATAMI 2025』にて配布されたハンドアウトから、一文を引用したい。

 

「地域で行われるアート活動とは、新しい何かを生み出すだけでなく、既にある風景や記憶に別の視点を共有していく……」

 

(全文はこちら→再構築 / REMIX という在り方

 

アートと怪談を同じ文脈で語ることが適切なのかはわからないが、私はこの文章を読み、『熱海怪談』の目指すところも腑に落ちたのである。

 

それは、熱海という土地が持つ物語、人の営みに光を当て、見つめ直そうとする試みといえるのではないだろうか。

 

 

 

 

第1回から企画・運営のお手伝いをしている『熱海怪談』。

 

ありがたいことに地元の皆様から好意的に受け入れていただき、遠方からもたくさんの方々に参加いただいている。

 

市内の複数の場所を会場として設定し、参加者が各会場を巡っていくような形でやってみても面白いのかもしれない。街歩きと怪談の融合、ということになるだろうか。

 

今後もこのイベントが、より多くの人と熱海との縁を繋ぐ場になれば嬉しい。