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DATE2024.07.06

この記事を書いた人

ひらい めぐみ

図面デザインから内装の提案、施工までを手がける三宅さん|マチモリ不動産をつくる人 vol.3

 

 

マチモリ不動産には、実際に熱海に暮らしているひと、他の地域で暮らしながら熱海に関わっているひとがいます。この連載では、マチモリ不動産にかかわっている「ひと」にフォーカス。

 

第3回は、フリーランスで大工を生業としている三宅さん。「大工」と言いつつも、三宅さんの担当範囲は、お客さまへのヒアリングから図面制作、実際の施工、現場監督など多岐に渡ります。

 

30代でフリーランスで大工とかなりめずらしい経歴を持った三宅さんがどのようにして今の仕事にたどり着いたのか、またマチモリ不動産と接点を持つようになったきっかけや施工した物件について、現在リノベ中の三宅さんのお家にお邪魔しながらお話をうかがいました。

 

 

 

子どもの頃から、間取りを見て実際の生活を想像するのが好きだった

 

 

 

 

――三宅さんは大工さんとして現場の施工だけでなく、図面制作もされるとうかがいました。いつごろから今のお仕事に興味を持つようになったのでしょうか。

 

 

三宅さん:子どもの頃から間取りを見るのが好きだったんですよね。折込のチラシを見ては実際の暮らしを想像したりとか。あと父親が舞台の裏方業をしていたことも、ものづくりに興味を持ったことにつながっているかもしれません。

 

 

――では、早い段階から建築の仕事に携わることを考えていたんですね。

 

 

三宅さん:そうですね。高校を卒業した後はインテリアデザインの専門学校へ入り、そこで図面の引き方を学びました。ただ、「図面が引けるだけ」になるのは嫌だったので、現場職を目指した結果、大工になっていました。

 

 

 

 

――「図面が引けるだけ」なのは嫌だなと思ったのは……?

 

 

三宅さん:生活動線を考えて構想し、図面に落とし込むこと自体はたのしいんですが、作りを知らないと「この壁はぶち抜けるのかな」とか「理想はこうしたいけれど、現実的にできるのかな」と、わからないことが出てくるんですよね。そういうときに先生に相談してみたら、デザインの先生よりも職人の先生のほうが知識を持っていたんです。それで、現場を知っていたほうが自分の経験を培うことができるだろうなと思うようになりました。

 

 

――「大工」と聞いて想像するのがハウスメーカーや工務店に入ったり、親方に弟子入りしたりするようなイメージがあるのですが、三宅さんはどのように大工さんになったんでしょうか。

 

 

三宅さん:自分の場合はちょっと特殊で、ビッグサイトや幕張メッセで開催されているような展示会のブースをつくる会社に新卒で入社したんです。そこで2年ほど働いたあと独立し、師匠を持たずにいろんな人の手伝いをして現場経験を積んでいきました。

 

 

 

 

――展示会のブースをつくる会社があるんですね。

 

 

三宅さん:そうなんです。展示会で経験を積むことができたのはかなり大きかったですね。つくるものは小さいんですが、やってることは大きい建物と一緒なんですよ。それを短いスパンで繰り返すので、年間で300〜400件はこなしていました。そこで相当な場数を踏めたなと思います。

 

 

 

「無理なことはしない」。長く物件を使ってもらうために、三宅さんが大事にしていること

 

 

 

 

 

――三宅さんが今やっているお仕事についてぜひ教えてください。

 

 

三宅さん:店舗や住宅のリノベーションから、個展の設営まで分け隔てなくやっています。全部自分が担当する場合は、お客さんにイメージをヒアリングし、図面を引いて提案し、実際の施工まで行います。店舗などお客さんが急いでいる際にはすべて決めてから始めると時間がかかるので、下地まで終わらせた頃に床の素材や壁紙など細かな部分を決めていくことが多いですね。

 

 

 

 

 

――今の家に住む前は東京でお仕事をされていたんですよね。東京と熱海の違いを感じる部分はありましたか?

 

 

三宅さん:東京は木造の家が多く、できることが限られていました。古い木造の物件だとシロアリが食っていたり、木が腐っていたりするので、お客さんからの要望通りできるかどうかは、建物の中の状態次第。一方、熱海の物件は鉄筋コンクリートでできた建物が多く、土台がしっかりしているので、築年数が経っていても手を施せば住める状態になる建物が多い。古くても鉄筋コンクリートでできた物件が多いのは熱海ならではだなと感じます。

 

 

 

▲ 三宅さんがご自身でリノベーションされているご自宅のお風呂。ツートーンの配色がすてきです

 

 

――手を加えるのが特に大変だったなと感じた物件はどこでしょうか。

 

 

三宅さん:最初に担当したマンションの一室ですね(笑)。マンションのお部屋は、コンクリートの物件のリノベーションが初めてだったこともあって、トイレがこんなに頑丈につくられているんだ、とか、配管がどこを通っているかわからないから木造よりも崩すのが大変だな、と探り探りで進めていきました。

 

 

 

 

 

▲ 三宅さんが最初に担当したマンションの一室 Before/After

 

 

三宅さん:もうひとつはアタミスタンド さんですね。こちらは元お蕎麦屋さんだった場所で、リノベーション前はザ・和風の内装だったので、どこまで改装するか悩んだ物件でした。

 

 

 

――お店でも住宅でも、お仕事する上で三宅さんが大事にしていることはありますか?

 

 

三宅さん:ひとつは、お客さんの作りたい世界観を予算内で表現するために、どれだけ提案できるか、ということを考えています。もうひとつは、「無理なことはしない」ですね。たとえば店舗スペースを5cm広げるために、ほんとうは奥の配管スペースを考慮しないといけないのに、無理な設計をしたとします。そうすると、後々メンテナンスが必要になったときに「壁を壊さないとできません」と業者の人に言われる、といったことが起こるんです。

 

 

――将来そういったトラブルが起こらないようにするためにも、「無理なことはしない」は大事な判断軸ですね。

 

 

三宅さん:そうですね。現状では見えないけれど、これから先に想定されることも含めて、お客さんの要望に合わせた提案をするようにしています。

 

 

 

海があって山に囲まれた熱海は、地元の岡山と似ている

 

 

 

 

――三宅さんが東京から熱海に移住したきっかけはなんだったのでしょうか。

 

 

三宅さん:東京には10年ほど住んでいたんですが、そろそろ離れようかなと考えていたんです。家賃が高いことや、現場がせまくて作業しづらいこと、現場へ車で移動するにも駐車場代も高いことなど、生活に結びつくところで窮屈さを感じることが多くなっていて。東京で学びたいことは吸収できたし、ゆくゆくは地元の岡山に戻ることも見据えて、都心からは離れようと。

 

 

 

 

 

――移住先に熱海を選んだのは知り合いがいたとか……?

 

 

三宅さん:そうですね。仕事でお付き合いのある会社さんが熱海で工房にするための物件を借りてから、片付けの手伝いをしに熱海へ行くようになったんです。そしたら、その物件をマチモリ不動産が仲介していたらしく、代表の三好さんと知り合ったんですよね。それで、「どこかいい物件ないですかね」と相談したら、今の部屋を紹介してくれて。

 

 

――ということは、部屋を決めると同時にぽんと移住したんですね。

 

 

三宅さん:もう即決でしたね(笑)。窓からの眺めと、壁をぶち抜いたらぜったいに良い部屋になるだろうなと思ったので。また、熱海という場所で言うと、海と山に囲まれている感じが地元の岡山と少し似てるんです。流れる時間が東京よりゆったりしているところとかも。そういった地元と近い安心感があったことも、移住する上で影響していたかもしれません。

 

 

 

▲ お部屋入居当時の様子

 

 

 

時間をかけて自宅をフルリノベーション。仕事ではないからこそできること

 

 

 

 

――現在も三宅さんご自宅はリノベーション中とのことですが、なにかテーマは決めていますか?

 

 

三宅さん:「カオス」ですね。仕事では、予算と全体のバランスから引き算していくことがほとんどなんです。足しすぎると落ち着かない空間になっちゃいますし。だけど、この部屋は自分でお金を出しているから、好きな空間にするために引き算をしないと決めています。壁を場所ごとに変えて、飾り付けも部屋ごとに違うものにして。また、がらくたを集めるのが好きなんですが、東京の賃貸だとスペースが限られていたので、ここではお気に入りのものを思う存分並べたいなと思っています。

 

 

 

▲ 三宅さんがご自身でつくった自宅の図面。これから置く予定の家具やそれぞれの部屋の使い方についても書かれています

 

 

 

――たしかに部屋じゅうにいろんなものがあってたのしいです! ただ、三宅さんに作りたい方向性が見えているからか、ふしぎと落ち着く空間ですね。

 

 

三宅さん:個人的には綺麗な部屋よりも、こういういろんな要素がひとつの空間にある部屋のほうが好きなんですよね。完成したら「こんな部屋もありますよ」と施工事例のひとつとしてお客さんにも紹介したいです。

 

 

 

 

▲ お部屋のあちこちに並ぶかわいい雑貨の数々は、古道具屋さんやクラフトショップをめぐって見つけたり、知り合いからもらったりしたものなのだそう。

 

 

――家具も作られているんですよね。自宅をこれだけイメージ通りに作れたら、きっとたのしいだろうなと思います。三宅さんの働き方を通して、大工に興味を持つ人が増えるんじゃないかなと感じました。

 

 

三宅さん:今はほんとうに人手不足で、特に若い人は少ないので、ぜひ興味を持ってくれる人が増えたらうれしいですね。仕事を覚えさえすれば後は道具が仕事をしてくれるので。最初の1〜2年は場数をたくさん踏んで、1〜2年目の稼ぎを道具代に費やせば、ある程度つくれるようになります。

 

 

 

 

――これからやってみたいことはありますか?

 

三宅さん:今もやっていることですが、古くて今使われていない物件を一件ずつ新たに使ってもらえるかたちに作り直していくことですね。また、自宅のように自分の好きなスタイルのお客さんを増やしていけたらいいなと思っています。そのためには、まず自宅を完成させることからですね……(笑)。

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「大工」という職業から思い浮かべるストイックなイメージとは裏腹に、三宅さんは終始柔和な語り口で、お仕事のこと、自宅のリノベーションの構想などについて話してくれました。

 

 

マチモリ不動産の物件のリノベーションと並行して、これからも三宅さんのご自宅の完成を見守っていきたいと思います。ぜひ続報をたのしみにお待ちください!

 

 

 

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